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THE KOOKS、英・ブリクストン・アカデミーでの最新ライヴレポートが到着!

October11 The Kooks@O2 Academy Brixton
サード『ジャンク・オブ・ザ・ハート』英リリースからほぼ1ヶ月、ザ・クークスが02アカデミー・ブリクストンことブリクストン・アカデミーに帰ってきた。
ビーディ・アイ他が出演した4月の日本震災ベネフィット・コンサートにも使われたこの会場は、ロンドン屈指の老舗な大ロック・ヴェニューとしておなじみ。もちろん、チケットは完売だ。バンドの世代を反映し、圧倒的に若い観客達がぎっしり詰まった熱気の中、待ちきれない女性ファンから「ルーク!カモォ~ン!」の掛け声が時たま耳に飛び込んでくる。

開演前、ステージを見やっていて頭に「?」マークが点灯。舞台のふち=モニター・スピーカーやフット・ライトをまたぐ形で、ステージを右から左に横切り、金属性の低いブリッジが長くわたされているのだ。何じゃこれは?・・・と思っているうちに、カニエ・ウェスト〝Power〟のBGMが切れて客電が落ち、バンドが登場。〝Is It Me〟の軽快にスパークするビートがキック・オフし、場内が瞬時に興奮で染まる。頭上からはもちろんのこと、バンドの足元から会場2階席に向けて照明ビーム群が軽やかに蹴り上がる光景は、終始アップビートでエネルギッシュだったこの晩の空気にぴったりだ。
続いて前作からのヒット〝Always Where I Want To Be〟が飛び出し、早くも合唱の開始! ハンド・マイクに持ち替えたルークが、先述した謎のブリッジ(お立ち台)にひらりと駆け上がって左から右へ自由自在、しなやかなダンスを繰り広げつつ歌い、煽り、見せる。白Tシャツにデニム・ジャケット、タイトな黒ズボンのその姿は、さながらミック・ジャガー、マイケル・ハッチェンスといった歴代ロックンロール・カリスマへのオマージュ。「フロント・マン」という看板(チーフ・ソングライターでありシンガーなので、実質そうなんだが)を正面から背負う覚悟を決めたごときルークの吹っ切れぶりは、『ジャンク・オブ~』の開けたサウンドともばっちり共鳴している。
とはいえ、彼の基本はエレキ、あるいはアコギをかきむしりながらパッショネイトに歌い上げる、実直なバンド・マンのスタイル。〝Sofa Song〟、〝She Moves In Her Own Ways〟といった無条件で盛り上がるメロディックな曲ではシンガロングをリードし、会場を激しく揺らしてみせる。〝Killing Me〟、〝Eskimo Kiss〟など、最新作からのトラックはロック・バンドとしての鍛えられた足腰~音楽的な振れ幅をたっぷり聴かせてくれた。

文字通りノンストップ、カラフルかつチアフルなポップネスで畳み掛けたところで、ルークの弾き語りによる〝Seaside〟。オーディエンスのあたたかな歌声がそこにぴったり寄り添う、なんとも美しい様をブレイクに挟んで後半がスタート。キーボードを弾くヒューに喝采が注がれた〝See The Sun〟、ブリットポップ味で光る〝How’d You Like That〟の弾み重なるグルーヴと一体感は見事だった。〝Ooh La〟で完全に会場を掌握した彼らは、本編ラストの2曲=手拍子の渦で迎えられた〝Shine On〟の泣き、力強い演奏に負けじとダイナミック&スリリングなシャウトで圧倒した〝Do You Wanna〟まで、一瞬とてたるむことのないショウを展開してみせた。

アンコールの2曲目〝Junk Of The Heart(Happy)〟に、やさしい海辺のそよ風のように頬をなでた♪I Wanna Make You Happy…のコーラス。それを聴きながら、今のクークスは何より、ライヴに来てくれた聴き手に幸せにしたいんだなと感じた。そんな真摯な思いを、素直に表現するのはどこか気恥ずかしいし、クールではないのかもしれない。けれど、自己満足や気取りを感じさせない全力のプレイと充実したセット・リスト、てらいなくムードを盛り上げ全身でアピールするルークの積極性は、オーディエンスの求める「グッド・タイムス」と「歓喜」を確実に生み出していた。
締めくくりはお待ちかね!〝Naive〟で、若さの痛みにほろ苦さが加わり情感を増したプレイに、会場全体が声を限りの大合唱のウェーブを返していく。3作目にして、再び固く結びついたクークスとファンとの絆を目にしたようで、とても清々しかった一夜。この光景は、きっと来年1月のジャパン・ツアーでも繰り返されることだろう。(坂本麻里子)